最近のイスラエル政治について
作成日時
2023/1/30 9:28
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いつもお祈りくださりありがとうございます!
ただいま絶賛テスト期間中で、気持ちは大忙しの年増です。
先日のテロについて、ご心配のメッセージをいただきました。
いつも気にかけていただき、本当にありがとうございます。
私の住むテルアビブは通常運転で、私自身も元気にしております。
今のイスラエル政治の現状について簡単にご報告させていただきます。
授業で聞いたこと、ニュースで見聞きしたこと程度で、あまり深掘りができていないことをあらかじめお断わりいたします。
*カバー写真は、大学で行われたデモの写真。私は野次馬です。(2023年1月16日)
最高裁改革案
今、もうひとつ注目されているのが、最高裁改革です。
イスラエルの右派〜極右は、最高裁がリベラル寄りだ、という批判が根強いです。
そこで、現政権は最高裁の違憲判決を覆すことができるようにする基本法(憲法に相当)改正を目指しています。
この基本法改正は、実質的にイスラエルの民主主義を大きく後退させるものです。
なぜイスラエルは民主主義的に弱いのか?
イスラエルは、完全比例代表の一院制議会を持つ議院内閣制です。
これは日本やアメリカと比較すると、極めて権力均衡が働きにくい制度で、民主主義が維持しにくい側面があります。
具体的にはこんな感じです。
- 完全な比例代表制→大規模政党が誕生しにくく、政治が不安定化しやすい
- 一院制議会→いわゆるねじれが起きません。
- ねじれは政治的不安の象徴みたいなイメージがありますが、同時に、政府の暴走を止めている、という民主主義的に肯定的な側面があります。
- アメリカ議会が今まさにねじれの状況ですが、上院(もしくは下院)の暴走を、他の院が止めることができます。
- イスラエルにはこの機能がありません。
- 議員内閣制→議会の主流派が内閣を担うため、議会と内閣の間の権力監視機能が働きません。
こんな感じで、元々イスラエルは民主主義的に極めて脆弱な政治体制をしており、最高裁判所が違憲判決を出すことができる権限こそ、唯一の権力均衡機能とも言える状況でした。
最高裁改革案の内容
今回の法改正は、最高裁の違憲判決を議会の単純多数決で覆すことができるようにするものです。
つまり、例えば
与党が多数決でトンデモ立法を作る→最高裁が違憲判決→トンデモ立法撤回
となるところが、
与党が多数決でトンデモ立法を作る→最高裁が違憲判決→「与党が多数決で違憲判決を無効に」→トンデモ立法成立
となってしまいます。
これはイスラエルの三権分立を極めて脆弱にするもので、実質的に民主主義の後退です。