最近のイスラエル政治について

いつもお祈りくださりありがとうございます!
ただいま絶賛テスト期間中で、気持ちは大忙しの年増です。
先日のテロについて、ご心配のメッセージをいただきました。
いつも気にかけていただき、本当にありがとうございます。
私の住むテルアビブは通常運転で、私自身も元気にしております。
今のイスラエル政治の現状について簡単にご報告させていただきます。
 
授業で聞いたこと、ニュースで見聞きしたこと程度で、あまり深掘りができていないことをあらかじめお断わりいたします。
*カバー写真は、大学で行われたデモの写真。私は野次馬です。(2023年1月16日)

極右政権の誕生とテロ

現在のネタニヤフ政権は、右派、極右、宗教右派からなる連立政権で、イスラエル史上もっとも右派の政権です。
昨年末に政権が誕生して以降、パレスチナでの入植を進めたり、大規模な対テロ作戦を実行したりと、パレスチナに強硬な政策をとってきました。
今回、エルサレムで起きたシナゴーグで起きたテロも、パレスチナでの大規模対テロ作戦の翌日に行われたものです。
これに対して、イスラエル政府はパレスチナへの送金を停止しました。*パレスチナの貿易に係る税金を、イスラエルが代理徴収、送金しています。

最高裁改革案

今、もうひとつ注目されているのが、最高裁改革です。
イスラエルの右派〜極右は、最高裁がリベラル寄りだ、という批判が根強いです。
そこで、現政権は最高裁の違憲判決を覆すことができるようにする基本法(憲法に相当)改正を目指しています。
この基本法改正は、実質的にイスラエルの民主主義を大きく後退させるものです。
 
なぜイスラエルは民主主義的に弱いのか?
イスラエルは、完全比例代表の一院制議会を持つ議院内閣制です。
これは日本やアメリカと比較すると、極めて権力均衡が働きにくい制度で、民主主義が維持しにくい側面があります。
具体的にはこんな感じです。
  • 完全な比例代表制→大規模政党が誕生しにくく、政治が不安定化しやすい
  • 一院制議会→いわゆるねじれが起きません。
    • ねじれは政治的不安の象徴みたいなイメージがありますが、同時に、政府の暴走を止めている、という民主主義的に肯定的な側面があります。
    • アメリカ議会が今まさにねじれの状況ですが、上院(もしくは下院)の暴走を、他の院が止めることができます。
    • イスラエルにはこの機能がありません。
  • 議員内閣制→議会の主流派が内閣を担うため、議会と内閣の間の権力監視機能が働きません。
こんな感じで、元々イスラエルは民主主義的に極めて脆弱な政治体制をしており、最高裁判所が違憲判決を出すことができる権限こそ、唯一の権力均衡機能とも言える状況でした。
 
最高裁改革案の内容
今回の法改正は、最高裁の違憲判決を議会の単純多数決で覆すことができるようにするものです。
つまり、例えば
与党が多数決でトンデモ立法を作る→最高裁が違憲判決→トンデモ立法撤回
となるところが、
与党が多数決でトンデモ立法を作る→最高裁が違憲判決→「与党が多数決で違憲判決を無効に」→トンデモ立法成立
となってしまいます。
これはイスラエルの三権分立を極めて脆弱にするもので、実質的に民主主義の後退です。

リベラル派の反発とデモ

右派世論は、選挙で多数派をとったのだから、これが民意だと支持しています。
一方、リベラル派は、テルアビブの市民や大学を中心に反発をよんでいます。
テルアビブ、ハイファ、エルサレムなどの大都市ではデモがありました。
リベラル派の多いテルアビブは人口40万の街ですが、3週末連続で8万〜10万人の大規模デモが行われました。
そこにテロが発生し、前回のデモではテロへの黙祷が捧げられるなど、デモの性質に少し変化が見られました。
テロや戦争においては、イスラエルには右派も左派もなく、団結します。
今後の展開に要注目です。
イスラエルのためにぜひお祈りください。